メトロポリタン歌劇場
2010年 03月 05日
アメリカのオーケストラの音色の華麗なこと、響きの豪華さ、演奏技術が非常に高度であること等はすでに十分承知している。しかしこのメトロポリタン歌劇場のオーケストラ、ソリストの歌唱力、オペラそのものの出来映え、そのどれもがある芸術的成熟期を迎えているように、私には感じられた。
20世紀は「アメリカの時代」と言われている。その豊かな財力で世界をリードしたしたことは衆知の事実。だが芸術性については、ヨーロッパに一歩及ばない、といった評価も確かにあったと思う。しかし、このメトロポリタン歌劇場の舞台を見る限り、その認識とは異なる時代が始まったのではないかと思えるのだ。
全ての高度な技術の集積が、20世紀の100年の時を経て、薫り高い芸術へと熟成したのではないかと思われる。高度な芸術としての味わいと薫りは、熟成を重ねたビンテージ・ワインそのままの、素晴らしいバランスを保っている。スカラ座とも違う、ウィーン国立歌劇場とも違う、違うけれども完全に納得させられる新しいビンテージ・ワインが歴史の中に誕生したのではないだろうか?