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by jmc_music2001jp

チューリッヒ歌劇場<カバレリア・ルスチカーナ><道化師>

 この3月は嬉しいオペラ三昧、一昨日の深夜はチューリッヒ歌劇場が紹介された。この歌劇場は斬新な照明手法や美しい舞台・衣装で評価の高い劇場である。出し物は<カバレリア・ルスチカーナ>と<道化師>。例のごとく全曲をジックリ鑑賞する余裕はなかったが、その中でも興味引かれるものがいくつか存在した。

 <カバレリア・ルスチカーナ>は一貫してモノトーンの暗い色調の中で物語が進行する。それはモウ、ほとんど単調と言っていい程、特に背景の空はグレーの色調で、時間の経過で色合いや明度が変わることもない。背景に流れる『雲』にいたっては、常に同じスピードで同じ白い雲が流れてゆく・・・・普通ならば緊迫した場面になると、暗雲が立ちこめたりしても不思議は無いのだが・・・依然として淡々と白い雲がながれて行く..........。

 芸術的照明のチューリッヒ歌劇場が“ドウシタことか?”・・・と訝ったが、休憩後に<道化師>が始まると、その疑問が氷解した。道化師では、歌の<背景>が変わる毎に、赤や黄色やと舞台背景の色が変わるのだ。基本の舞台装置は二つのオペラで共通の装置を使用、周辺の装飾を変えることでそれぞれのオペラの場面に仕立て上げている。

 男女の愛憎を描き上げたこの二つのオペラは、世界の劇場で一対のものとして一晩の舞台に掛けられるのが通例となっている。前半の<カバレリア>で背景の色を変え、雲の流れを変え・・ご丁寧に歌手の心情を照明で補足するようなプランを立てていたならば、後半の<道化師>の途中では、すでに観客の頭の中は『グチャグチャ』になって「世界の料理・屋台バイキング」を食べ過ぎたような気分になってしまうだろう。

 一晩全体を考えた照明プラン!『プロの仕事』ヤなぁ〜と感服した。歌手そのものの実力がメトロポリタンや先日のエクソン・プロバンス音楽祭に敵わないのはいたしかたない。コーラスとオーケストラのアンサンブルに乱れが生じたのも、どうした事かと思わされた。しかし、この歌劇場全体が目指そうとしている『オペラ』は、明確に伝わってくる。これこそ王道であると思う。

 話は横道にそれて恐縮だが、初めて来日したイタリア歌劇団での<道化師>、マリオ・デル・モナコの歴史的名演の衝撃は、今想い出しても凄まじいものがある。あのアリアで人生を狂わせた人を、私は知っている。

 
by jmc_music2001jp | 2010-03-23 13:37 | 芸術随想