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by jmc_music2001jp

チューリッヒ歌劇場「カバレリア・ルスティカーナ」

 再放送だったがチューリッヒ歌劇場の「カバレリア・ルスティカーナ」を観た。ここのオーケストラは完全に『オペラの空気』を知り尽くしている。オペラを知り尽くした指導者による永年の蓄積の賜物だろう。間の手で入ってくる楽器の音量や音質・フレージングに至るまで、<ココしか無い>というバランスで出てくるのだ。これは当日の指揮者が指揮したから・・・というのでは無く、劇場のオーケストラ自体に育まれたもの・・・かつてのライプチッヒ・ゲバントハウス管弦楽団やドレスデン歌劇場に残っていたものと同じだ。

 このオペラ、「間奏曲」が非常に有名で、独立してコンサートの演目にもしばしば登場する。美しい曲だけに、コンサートではその美しさを最大に歌い上げる演奏となるのが通例。しかし、チューリッヒ歌劇場の舞台では、文字通り<オペラの間奏曲>として、オペラと言う舞台の背景の、空白を埋める役割として、極さりげなく演奏された・・・ここでも思わず<うなり声>を上げた。本当に《流石!!》オペラを知り尽くしている!!オペラとは何か?!!人の感受性とは何か!・・・素敵な話だ。

 日本酒の造り酒屋の麹室には《麹菌》が住み着いていて、それが蒸した酒米を日本酒へと醸し出す・・・ちょうどそれと同じように、新しい団員は昔から引き継がれてきた《オペラの麹菌》に極自然に感染して、音楽の心が醸されていく・・・そんな美酒の味わいのするオーケストラだ。今時、大変貴重であると思う。

 日本酒は戦後永く、第二次大戦中の醸造基準が残ったままであった。等級をアルコール度数で分けて、しかもそのアルコールには醸造用アルコールが加えられていた。どの日本酒を飲んでも必ず翌朝の<頭痛>を引き起こしたものだった。その法律が廃止になって、ようやく美味い地酒が出現し始め、日本酒は復活した。まだまだ数は多くはないものの、本来の製法にこだわって醸された日本酒は本当に美味い。

 近年、オペラは危機を迎えている。主に経済的な理由によるものだと思われるが、そのような中で如何に芸術性を損なわない公演を維持できるのか・・・最も優れた成果をあげているのがチューリッヒ歌劇場だと思う。
by jmc_music2001jp | 2011-05-30 23:48 | 芸術随想