チューリッヒ歌劇場「カバレリア・ルスティカーナ」
2011年 05月 30日
このオペラ、「間奏曲」が非常に有名で、独立してコンサートの演目にもしばしば登場する。美しい曲だけに、コンサートではその美しさを最大に歌い上げる演奏となるのが通例。しかし、チューリッヒ歌劇場の舞台では、文字通り<オペラの間奏曲>として、オペラと言う舞台の背景の、空白を埋める役割として、極さりげなく演奏された・・・ここでも思わず<うなり声>を上げた。本当に《流石!!》オペラを知り尽くしている!!オペラとは何か?!!人の感受性とは何か!・・・素敵な話だ。
日本酒の造り酒屋の麹室には《麹菌》が住み着いていて、それが蒸した酒米を日本酒へと醸し出す・・・ちょうどそれと同じように、新しい団員は昔から引き継がれてきた《オペラの麹菌》に極自然に感染して、音楽の心が醸されていく・・・そんな美酒の味わいのするオーケストラだ。今時、大変貴重であると思う。
日本酒は戦後永く、第二次大戦中の醸造基準が残ったままであった。等級をアルコール度数で分けて、しかもそのアルコールには醸造用アルコールが加えられていた。どの日本酒を飲んでも必ず翌朝の<頭痛>を引き起こしたものだった。その法律が廃止になって、ようやく美味い地酒が出現し始め、日本酒は復活した。まだまだ数は多くはないものの、本来の製法にこだわって醸された日本酒は本当に美味い。
近年、オペラは危機を迎えている。主に経済的な理由によるものだと思われるが、そのような中で如何に芸術性を損なわない公演を維持できるのか・・・最も優れた成果をあげているのがチューリッヒ歌劇場だと思う。