チョン・ミョンフンの活動
2012年 07月 18日
今から約30年前、福岡の繁華街“中州”で飲んでいた時、ブラウン管の映像を観ていて閃いたことがある。「テクノロジーの進歩によって、音楽と映像のコラボレーションによる新しい表現形式が注目される時代が来る」と確信したのだ。クラシック音楽がより多くの人に親しまれる為の一手段として、必ず現れてくるハズ・・・と思い、自分もそのような作品の開発に携わりたいものだ・・・と思ったものでした。
彼の「動物の謝肉祭」は、そのような作品として成功を納めるに十分なハイレベルなもの、チョン・ミョンフンを全くもって《見直した》ことでした。しかし、その後に放映された演奏会は、さらに彼の考えの先進性を如実に現しているものでした。
ソロ・ピアノとジャズ・バンド、それにフル・オーケストラによる「展覧会の絵」(ムソルグスキー)。元来ピアノ独奏用として作曲されたこの曲は、ラベルによってオーケストラ曲に編曲され有名になりました。そして今回ジャズとの接点が見いだせる数曲を、ジャズのセッションに演奏させています。
これも編曲者が優れていて、全く違和感なく融合された世界を実現させていたのです。ここで一番興味をひかれた現象は、子ども達が多く招待されていて、ジャズの演奏に合わせて身体を動かしながら非常に楽しそうに聞いて(参加して)いた様子でした。
ジャズの神髄とも言えるのが『リズム』の要素です。リズムは人間の生の根源に深く根を下ろしていて、大脳辺縁系で受け止められる要素であり、子どもにも十二分に感応できるものです。ここにこの「展覧会の絵」の企画の主旨が感じられました。<子ども><現代>との接点を持ちながら、クラシック音楽の本質への橋渡しを試みる演奏会・・・チョン・ミョンフンの活動の趣旨に賛同し、時代の先頭を走る芸術家の努力に、畏敬の念を抱きました。