クラシック音楽、日本の問題ー[Ⅱ]
2015年 09月 26日
高度成長期(1970年代)にはピアノ・ブームが到来、ブームに継いで全国に音楽大学の設立が続きました。高度成長期の後には全国の一般大学に学生オーケストラが設立され、それに続いて市民オーケストラも全国各県に設立されています。このように一見隆盛を極めたかにみえる日本の西洋音楽事情も、その実態は根の浅い表層の文化的現象を超えるものでは無いと言う現実がございます。
一方、音楽大学の卒業生は国内に活躍の場が乏しく、欧米への留学に道を選び、国際コンクール入賞等の華々しい成果をあげる日本人音楽家が数多く存在するのも、一方における日本の現状でもあります。
[音楽大学の果たせる役割]
2011年度版の文科省『学校基本調査報告(高等教育機関編)』によると,同年春の大学の芸術関係学科卒業生のうち,芸術家(美術,写真,デザイナー,音楽,舞台芸術家)に就職したのは2,066人。
一方、2010年の『国勢調査』によると,職業が芸術家(美術家,デザイナー,写真家,映 像撮影者,音楽家,舞台芸術家)という者は361,300人。このうち音楽家は23,800人です。よって,音楽家が芸術家全体に占める比率は 6.6%となります。
さて,この比率を先の2,066人に乗じると,136人という数が出てきます。この推定音楽家就職者136人は,ほぼ全てが音楽関係学科の卒業生とみてよいでしょう。同年春の大学の音楽関係学科卒業生は4,485人です。したがって,音大卒業生のうち,晴れて音楽家になれたのは,136/4,485 ≒ 3.0%と算出されます。
音大卒業生100人のうち,音楽家になれるのは3人。競争率になぞらえると33倍。公務員試験や教員採用試験だって,競争率がこれくらいの水準に達することはしばしばですから,音楽家への道の狭さを殊更に強調するのは間違いであるかもしれません。
しかし問題なのは、残る97%の卒業生に対するマネジメントが、音楽大学においてほぼ100%機能していないと言う現実です。音楽大学は『音楽』を教えることだけを自らの役割と任じ、『音楽』を教えることだけで満足しています。97%の学生にとってこそ必要であろう、「社会に出て<自らをマネジメント>する為の初歩的知識」さえも与えようとしません。
日本のクラシック音楽界における、日本人音楽家へのマネジメント機能の欠如に気づいたのは、私のウィーン留学中のことでした。35年以上も前のことです。それ以来引き続き、そのテーマを追求してきたのですが、IT技術の発達につれて、ようやくその『解』の糸口が見えてきたと感じています。3%を10〜20%に引き上げる武器として、インターネットとクラウドが活用できるのではないか?・・・そう思って、困難な戦いに挑もうとしています。