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by jmc_music2001jp

『オペラ』・・・“絶滅危惧種”指定か!?

 ウィーン国立歌劇場の合唱団で永年歌い続けて来た日本人歌手(アンネットさん)が、昨シーズン限りで退団した。昨日のBSは彼女のこれまでの歴史と、その最期の数ヶ月を取材、我々に披露してくれた。しかしこのドキュメンタリーは、単に彼女の歴史と退団の事実に止まらず、深刻な問題を我々に提起している。

 彼女に退団を決断させた原因は、最近の舞台装置や衣装・演出に対する、拭い難い失望によるものだ。時代考証を無理矢理「現代」に設定し、安上がりのセットと背広やパジャマなどの衣装で済まそうとする傾向。これらは、ドイツの地方オペラにおいて、早くは35年程前から始まっていた。カラヤン亡き後のザルツブルグ音楽祭は突然の様変わりを見せ、最近のミラノ・スカラ座にもその傾向が見られると聞く。今、鳴りものいりで始まったばかりのバイロイト音楽祭<生中継>までが、「学校の理科室」に設定された舞台で、ワーグナーの楽劇を演じさせている。槍を片手にした主役が歌うのは、石切り場の舞台装置。何故かソコには2−3個の廃タイヤがころがっている・・・観客はこの視覚的な矛盾を無理矢理にでも結びつけようとするが、いくら演出家が<屁理屈>をこねようとも、まともな人間にとっては無理な算段である。そうまでしてオペラを観る必要があるのか・・・・!

 歌劇場総監督は苦悩の表情で語る・・・要するに「金が無い」のだ。カラヤンがウィーン国立歌劇場を去った原因もそこにあった。カラヤンが目指すレベルを実現するには、金をはじめ色々なものが不足していた。オペラ座の事情がソレを許さなかったのだ。ウィーンを去ったカラヤンは、故郷のザルツブルグに注目し、やがてザルツブルグ音楽祭を名実共に世界最高の音楽祭へと高めた。それが100%カラヤンの功績であることを証明するのは、彼の死後のザルツブルグ音楽祭の凋落ぶりを見ればよく判る。

 この最高レベルにあったザルツブルグ音楽際に、数多く接することが出来たのは、我々にとって本当に幸運としか言いようが無い。留学初年、いきなりのザルツブルグ音楽祭プリミエ公演『アイーダ』を観た衝撃を、新聞社に寄稿したことがある。「(実現には)日本ではあと50年か100年かかるのではないか」・・・50年、100年どころでは無い、下手すると世界中で今後永遠に実現しないかもしれないのだ。ウィーンでさえこの様に変わってしまったことを伝える昨日のドキュメンタリーは、『オペラ』を“絶滅危惧種”に指定するべきであることを知らせている。
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by jmc_music2001jp | 2010-08-30 04:41 | 芸術随想