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by jmc_music2001jp

創立800年“聖トーマス教会合唱団”

 創立800年“聖トーマス教会合唱団”によるバッハ『マタイ受難曲』が放映された。2012年の最新の録画によるもの。「マタイ」に先だって“聖トーマス教会合唱団”の生活を取材した録画が放映され、興味を引かれた。

 なにしろ800年の伝統と言うから、我々日本人からすると気の遠くなるような話だ。バッハがトーマス教会の音楽監督兼付属トーマス学校のカントルに就任したのが1723年であるから、さらに510年程も溯ると言う歴史を誇っている。ポリフォニーの形式が生まれ、定量記譜法が始まった時期と重なり・・・日本では鎌倉時代!!

 “聖トーマス教会合唱団”は9年間の寄宿舎生活の中で訓練される。これは実は非常に驚きだった。2010年のjmc欧州音楽の旅は主に旧東ドイツ圏を巡る旅を企画したのだが、ドレスデン歌劇場におけるオペラと共に、トーマス教会でのバッハのコンサートは旅の主要な目的となっていた。トーマス教会でのバッハは、想い出に残る貴重な体験であったが、その時「少年合唱団」の<音程>が悪いことが気にかかった。2年前のことだから指揮者も同じであると思う。今回その指導の様子なども収録されていたので、興味を引かれたのだ。

 しかし、「マタイ受難曲」でも指導の場でも、やはり<音程>は悪かった・・・・。9年間も寄宿舎に入れて訓練していて、アノ音程では具合も悪かろう・・・。結局「何」なんだろう「コレ」は・・・と考えてみた。指揮者のピラー氏は指導中に音程が悪かろうが特段気にする様子も無い、かと言って「マタイ」の指揮振りを見ると、指揮法はちゃんと理にかなっているし、指揮の通りの音楽が現れている。楽曲についても十ニ分の理解が得られていると思われる・・・で、つまりピラー氏は(優れて)<学者タイプ>の人なのであろうと言う結論に至った。学問的に優れた成果によって、トーマス教会の音楽監督として招聘されたのだろう。つまりは<演奏家タイプ>の人では無いと言うことだ。

 演奏法・歌唱法として「如何にして正しい音程をもたらせるか」についての知識がない(関心も無い?)。もう一つ「如何にして感情が歌声(響き)に反映されるのか」の仕組みについても知識がない(関心も無い?)・・・と言うことであろう。テキストはキリストの受難に対する民衆の悲痛な想いを語っているのに、響きにはその悲痛さは全く盛り込まれてはいない・・・。言葉は語られても、想いは伝わってこないのだ。

 しかし、ライプチッヒ・ゲバントハウス管弦楽団のメンバーは、それはそれは素敵だった。800年の伝統をしょって、淡々と黙々と音楽に向き合っている。「パフォーマンス」と言う言葉からイメージされる<現代風の演奏>とは、最も遠いところに立脚している演奏スタイル。黙々と自らの内にある想いを音楽に反映させる・・・特別なことでは無く、ごく日常的な想いとして・・・。

 このような音楽の『魂の伝統』が旧東独圏には残っていて、それに触れる為に2010年の旅を企画した。そして、その通りの音楽に触れて安心し満足したのが前回の旅だった。今回の「マタイ」の演奏は、あの旅の感慨を、再び思い起こさせてくれた。
by jmc_music2001jp | 2012-07-23 21:09 | 芸術随想