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by jmc_music2001jp

サイトウ・キネン・オーケストラ 2013

 松本で開催されたサイトウ・キネン・フェスティバルは、今年で第22回を数える。小澤征爾さんが食道ガンから復帰しての登場、素晴らしい演奏が繰り広げられた。

 今年度のメイン・プログラムはラベル作曲のオペラ『子どもと魔法』。20分練習しては15分休む・・・と言う、小澤さんの体力を温存させることに細心の注意を払いながらのリハーサル。本番は8月23日25日に開催された。

 開演に先立ち、永年コンサート・ミストレスを務められ、癌で惜しまれつつ亡くなられた潮田益子さんを追悼して、モーツアルトのディベルティメントK.136の2楽章が演奏された。

 この曲は桐朋学園の渡米オーケストラの出発前の最後の合宿(志賀高原)で、斎藤秀雄先生が人生最後の指導を行った曲でもある。進行した癌のせいで、痛くて指揮棒も動かせないような状態の中で、団員は異次元空間の中で一つになり、恐ろしい程の名演奏を繰り広げた。その2楽章の録音は、斎藤先生の葬儀会場に流されていて・・その音楽を聴くと、葬儀の日の会場の様子がまざまざと想い浮かぶ・・・この2楽章は、我々にとってはそのような曲でもあるのだ。

 ラベルの『子どもと魔法』・・・幸せな<音楽する時間>が始まった。最初は幾分硬さが残ったのか、演奏者が楽譜に対して少々真面目すぎる感じがした。もっと、物語の「雰囲気の流れ」「空気の流れ」を音で示すことができればベストだろうと感じられた・・・フランス風の軽い空気(雰囲気)の流れを演奏するように・・。さらに、ヤギと羊、羊飼いの場面では、ルネッサンス期の中世の太鼓のリズムが、萎縮してしまったようにも感じられた。

 しかし、ソリスト全員が外国から招聘された歌手ではあるものの、日本にはこれだけのレベルのオペラを制作・公演する力が有ると言う事であり、日本の松本はこれだけの芸術レベルを実現する力を持っている、と言う事に他ならない。欧州の一流のオペラ座の公演に一歩も引けを取らない芸術が、松本に花開いている・・・これはまぎれも無い事実である!

 猫が出て来る辺りから、オーケストラにも堅さがとれて、自然な『空気』そのものを漂わせるようになった。舞台美術も演出も申し分ない。昨今、ドイツやオーストリアで流行している「時代を現代(又は近未来)に置き換えた演出」等とは異なり、十二分に幻想的で非日常な夢の世界を体験させてくれた。欧州のどの一流の歌劇場の公演にも引けを取らない公演が実現したのだ。

 斎藤秀雄先生の『勝利』だと思った。先生が夢見ていた事を小澤さんが『現実』のものにしたのだ。《恩に報いる》とは、このことだろう。
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by jmc_music2001jp | 2013-10-01 01:06 | 芸術随想