『泉』 “次代への贈りもの” (2/4)
2016年 01月 13日
(株)ジェイエムシー音楽研究所代表取締役社長 大畑惠三
この七年前に小澤征爾がブザンソン指揮者コンクールに優勝。驚きと同時に将来への希望を与えてくれたニュースだった。そして又、高度成長期のピアノ・ブームがこの時代に続く。これ以後、日本が豊かになるにつれ、留学生も爆発的に増加した。海外コンクール入賞も増え、今日では取り立てて新聞沙汰にもならぬほど日常的な出来事となっている。
しかし一方、私が大学に入学する二年前、経営難を理由に東京交響楽団の事務局長が入水自殺。以後、同楽団は楽員の自主運営団体として活動を続ける。六年後にはフジテレビが日本フィルハーモニーに対する経済的支援を打ち切り、楽団は分裂、日本フィルと新日フィルに分かれてそれぞれ自主運営が始まる。ちなみに東響はその前身を東宝交響楽団と言い、往事最高のオーケストラ(私の伯父、故大畑保も首席フルート奏者として活躍)だったし、日フィルも当時最高の楽団であったのだ。私の大学時代は、音楽が盛んになる一方でこのようなオーケストラ受難の時代を目の当たりに見ることになる。以後「なぜだろう?」・・・と言う思いが頭から離れなかった。