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by jmc_music2001jp

カール・ベーム、指揮法と音楽

 私がこれまでに直接に体験した中で、[バトン・テクニックの稚拙さ]と[作られる音楽の偉大さ]のギャップの大きかった指揮者は、カール・ベームを除いて他には居ません。

 私のウィーン留学期は、良き時代の音楽の薫りを伝える巨匠が活躍している時代でもありました。チェリビダッケ、カラヤン、バーンスタイン、クライバー、マタチッチ、ホルストシュタイン、そして忘れてはならないのがカール・ベームです。

 私はウィーン・フィルハーモニーの練習を(コンサートマスターのライナー・キュッヒルさんにお願いして)しばしば見学するチャンスに恵まれました。貴重な体験でしたし、勉強のチャンスと言う意味では真に得難い機会を得ることができたと感謝しています。

 ある時、カール・ベームの指揮による定期演奏会の練習に立ち会うことができました。練習が始まり、最初のtuttiの棒が振り下ろされるとオーケストラはフォルテでバラバラになって出てきます。直ぐに練習を止めたベームが怒ります・・・やり直し。2回目...っと棒を振ると、再度バラバラ。又、ベームが怒鳴ります。3回目...、少しバラバラ。怒るベームの声。4回目・・・かなり揃ってバラバラ。怒るベーム、5回目・・・ほとんど揃って少しバラバラな音の出・・・6回目、見事に揃った緊張感溢れるtutti....そのまま緊張度の高い音楽が流れだします。

 「あの棒(指揮)では出れんよなァ〜」....見ていた私はそう思いました。しかし、ベームが怒り、繰り返される度に、オーケストラの集中度が高まり、全体が一つの緊張感で貫かれるまでにレベル・アップしてゆくのです。ある日のオペラ座で、私はオケピットを横から見下ろす席(4階の立ち席)から、ベームの指揮を見ていました・・・っと、ある管楽器が小さなミスをやらかしたのです。ベームは<キッ!>っとその奏者をにらみ付けると、そのまま30秒ほどその奏者をニラミ続けたのです・・・これがカール・ベームの(あえて言うならば)指揮法と言えるのでしょう。

 そのような指揮の結果に現れる「音楽」が、余りにも崇高で素晴らしいことを、全ての人が知っているからこそ、彼の音楽を指揮法までも含めて受け入れているのです。ベームは「耳」と「魂」で指揮をする指揮者の典型です。決して「腕」では指揮しなかった音楽家でした。彼の偉大さも、その「魂」に由来しています。
by jmc_music2001jp | 2009-02-24 01:43 | 芸術随想